今年も桜の季節がやってきました。眺めるだけで心がフワッと軽くなって嬉しくなるような、幸せな気持ちになりますよね。
ところで、桜は満開の時でもあまり香りを感じることはないのに、桜餅のあの独特な香りは…なぜ【これが桜の香】と言えるのかな?と、ずっと不思議だったんです。
今回、じっくり調べてみました。
香りの正体は、【クマリン】という成分です。桜の場合、花よりも葉に多く含まれていて、木に生い茂っている時は「糖」の殻に包まれているため、匂いがしないそうです。
この【クマリン】、実は身を守るための大切な「武器」でもあります。
植物にとって、葉は光合成をして栄養を作るという大切な仕事を担っています。その葉を虫がガリッと齧ると、「糖」の殻が壊れて中の成分が反応し、警告代わりの鋭い香りと苦味(毒性)を放って、これ以上齧られないように攻撃を仕掛けるのです。
この構造、ウイスキーボンボンに似ているかもしれません。チョコレート(殻)にコーティングされている時は、ウイスキー(クマリン)の香りはほとんどしませんが、チョコレートを齧るとウィスキーが出てきて香りやアルコールが口に広がる、あの仕組みですね。
そんな桜の「武器」を、桜餅の甘い香りに変えたのは、江戸時代のちょっとした偶然でした。隅田川沿いのお寺の門番さんが、掃除で集めた大量の落ち葉を「捨てるのはもったいない」と、とりあえず塩漬けにしておいたのが始まりだとか。
塩漬けにされた桜の葉のクマリンは、塩の力でゆっくり殻が溶け出し、毒性が弱まった「芳醇な香り」へと熟成されて、お餅を包むのにピッタリな葉っぱになったのです。人間であれば大量に食べなければ毒性も問題ないレベルだそうですよ。
自分の命を守る時は一瞬で「毒」に変わるけれど、役目を終えて落ち葉になった後、手間ひまをかけると「甘い香り」になって私たちを楽しませてくれる・・・
桜の香りには、こんな不思議な秘密があったんですね。
みなとアクルスのソメイヨシノはちょうど見頃を迎えています。お近くにいらっしゃった際は、“ホントに桜餅の匂い、今はしないのかな?”と、確かめに来てくださいね。